マイコプラズマ感染症とは
マイコプラズマは細胞壁を持たない細菌で、100を超える種類が知られています。そのうち性感染症の原因として懸念が高まっているのがマイコプラズマ・ジェニタリウムです。マイコプラズマ・ジェニタリウムは泌尿器や性器の粘膜にすみつき、性行為による直接の接触で感染します。※5
クラミジア・淋菌と並んで尿道炎・子宮頸管炎の最も一般的な原因菌で、これらとの混合感染も多いとされています。薬剤耐性化率が上昇傾向にあり、世界的に懸念されている病原体です。※3
肺炎のマイコプラズマとの違い
同じマイコプラズマでも、肺炎を起こすマイコプラズマ・ニューモニエは「非定型肺炎」の代表的な原因菌で、性感染症のマイコプラズマ・ジェニタリウムとは別の菌です。マイコプラズマ・ニューモニエによる肺炎は、症状がゆるやかに始まることと、潜伏期間が2〜3週間であることが特徴とされています。※5
一方のマイコプラズマ・ジェニタリウムは、クラミジアと同じく細胞の中にすみつく菌で、淋菌に比べて症状がおだやかなことが多いといわれます。※3
どのようにうつるのか
マイコプラズマ・ジェニタリウムは、性行為で粘膜と粘膜が直接触れ合うことによってうつります。※5
性感染症全般について厚生労働省は、口から性器へ、性器から口へ、の二通りの感染がありうると説明しています。のどに病原体が感染しても症状が出ないことが普通で、気づかないままオーラルセックスをして相手の性器にうつしてしまうことがあるとされています。※2
オーラルセックスのときにもコンドームを使うと、感染のリスクを下げることができます。※2
ただしコンドームは、性器や口の粘膜が直接触れ合うのを防ぐもので、それだけでは防ぎきれない性感染症もあると注意が促されています。※1
女性にあらわれる症状
女性では無症状の感染も多く、症状が出た場合もクラミジアと同じく、淋菌に比べて軽いことが多いといわれます。※3
厚生労働省は、女性は解剖学的に感染の危険性が高く、感染しても無症状の場合が多い一方で、感染すると慢性的な骨盤内炎症性疾患の原因となりやすいという特性があるとしています。※1
子宮頸管炎のある女性の10〜30%からマイコプラズマ・ジェニタリウムが検出されるという報告があり、繰り返す子宮頸管炎では、この菌を調べることが勧められています。※6
不妊・妊娠との関わり
女性では、子宮頸管炎、骨盤内炎症性疾患(PID)、早産、流産、不妊症との関連が報告されており、感染している女性ではこれらのリスクがおよそ2倍になるとされています。不妊については、症例対照研究とメタアナリシスからも、原因となりうることが示唆されています。ただし、妊娠中の感染が早産や流産、低出生体重の原因になるかについては、根拠が不十分で報告が一致していません。※6
同じ仲間のマイコプラズマ・ホミニスは、妊娠中期の流産や早期の流産との関連が報告されています。※5
厚生労働省も、生殖年齢にある女性が性感染症にかかった場合は、母子感染による次の世代への影響があり得ることを問題点として挙げています。※1
検査でわかることと調べ方
診断の基本となる検査(ゴールドスタンダード)はPCR検査です。※3
検査には、尿や子宮頸管・腟から採取した検体を使うことができます。※6
のどの感染が心配な場合は耳鼻咽喉科か性感染症を専門とする医療機関が、性器の感染が心配な場合や性器のまわりに症状がある場合は泌尿器科や産婦人科が対応すると、厚生労働省は案内しています。※2
治療について
国内では、マクロライド系の薬に耐性を持つマイコプラズマ・ジェニタリウムの割合が30~40%程度と考えられています。国内のガイドラインは、まずアジスロマイシンで初期治療を行い、症状が改善しない場合にシタフロキサシンを使うことを推奨しています。検査でマイコプラズマ・ジェニタリウムが確かめられている場合には、初期の治療からニューキノロン系のシタフロキサシンを使うことも許容できるとされています。※4
シタフロキサシンは1回100mgを1日2回、7日間服用することとされ、少ない量では効きが悪くなる可能性があると示されています。※4
一方、マイコプラズマ・ジェニタリウムは細胞壁を持たないため、ペニシリン系やセフェム系など細胞壁に作用する抗菌薬は効きません。※6
薬が効きにくいことがあります
淋菌とクラミジアのどちらも検出されない尿道炎は、クラミジアによる尿道炎に比べて治りにくく、同じ治療をしても再発する例があるとされています。※4
症状が長引くときや繰り返すときには、マイコプラズマ・ジェニタリウムの関与を疑うべきだとされています。※6
パートナーと一緒に治療する理由
すべての性感染症に共通して、パートナーへの告知とパートナーの同時治療が重要です。※3
国内のガイドラインでも、治療の間はコンドームを使わない性行為を避け、パートナーの検査も行って同時に治療することが強く推奨されています。※4
厚生労働省も、妊娠を希望する女性に加えて、そのパートナーにおいても性感染症の予防に十分留意するよう促すことが重要だとしています。※1
※1 厚生労働省「性感染症に関する特定感染症予防指針(平成十二年厚生省告示第十五号・令和七年十一月十日改正)」(令和7年11月10日改正)
性感染症は、早期発見及び早期治療により治癒、重症化の防止又は感染の拡大防止が可能な疾患であり、性感染症の予防には、正しい知識とそれに基づく注意深い行動が重要である。
このため、不妊等の後遺障害や生殖器がんが発生し、又はヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus。以下「HIV」という。)に感染しやすくなる等性感染症の疾患ごとに発生する様々な重篤な合併症をもたらすことが問題点として指摘されている。
特に、生殖年齢にある女性が性感染症に感染した場合には、母子感染による次世代への影響があり得ることが問題点となっている。
また、女性の場合には、解剖学的に感染の危険性が高く、感染しても無症状の場合が多い一方で、感染すると慢性的な骨盤内炎症性疾患の原因となりやすく、次世代への影響があること等の特性がある。
普及啓発に当たっては、妊娠を希望する女性に加え、そのパートナーにおいても性感染症予防に十分留意することを促すことや、性感染症及びその妊娠や母子への影響を性と生殖に関する健康の問題として捉える配慮をすることが重要である。
コンドームは、性器や口腔粘膜を直接接触させないことで性感染症の感染を予防する効果があるが、コンドームだけでは防ぐことができない性感染症がある等の情報について、国及び都道府県等は民間企業及びNGO等とも連携しながら普及啓発に努めるべきである。
※2 厚生労働省「オーラルセックスによる性感染症に関するQ&A」(2022年11月24日最終更新)
オーラルセックスにも性感染症にかかるリスクがあります。口(くちびる、口内の粘膜、のどを含みます)から性器へ、性器から口へ、の二通りの感染がありえます。
性器から口への感染の場合、口内(特にのど)に性感染症の病原体が感染しても症状が出ないことが普通です。その結果、のどに感染していることに気づかないままオーラルセックスして、口から性器へ、つまり相手の性器に病原体をうつすことがあります。
オーラルセックス時にもコンドームを使用すると感染のリスクを下げることができます。
のどの感染が心配な場合は耳鼻咽喉科あるいは性感染症を専門とする医療機関が対応しますが、事前に性感染症の診療が可能かどうか電話等で確かめてください。性器の感染が心配もしくは性器周辺の症状がある場合は泌尿器科や産婦人科、くちびるや皮膚の症状がある場合は皮膚科に相談してください。
※3 国立健康危機管理研究機構 国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター「クラミジア、淋菌、マイコプラズマ・ジェニタリウム(尿道・子宮頚管炎、咽頭・直腸感染)」(2023年10月16日更新)
代表的な性感染症である尿道炎・子宮頚管炎の最も一般的な原因菌は、クラミジア(Chlamydia trachomatis)、淋菌、マイコプラズマ・ジェニタリウム(Mycoplasma genitalium)で、その混合感染も多い。
これらの疾患は、女性では無症候感染も多いが、男性では有症状であることが多く、特に、淋菌性尿道炎の症状は激しく、しばしば尿道から膿の流出をみる。
クラミジアとマイコプラズマ・ジェニタリウムはいずれも細胞内寄生菌であり、淋菌と比較してマイルドな症状を呈することが多い。
薬剤耐性化率が上昇傾向であり世界的に懸念されている病原体である。
上述三菌種ともに診断のゴールドスタンダードはPCR検査である。
また、全ての性感染症を通じて、パートナーへの告知とパートナーの同時治療が重要である。
※4 日本感染症学会・日本化学療法学会「JAID/JSC 感染症治療ガイドライン2018 ―男性尿道炎とその関連疾患―(感染症学雑誌 第92巻 第3号)」(2018年5月20日)
非クラミジア性非淋菌性尿道炎はクラミジア性尿道炎と比較して難治性であり,同じ治療を行っても,再発を来す症例がある(AⅠ).
わが国も例外でなく,マクロライド耐性を有する M. genitalium の割合は 30~40% 程度であると考えられている(BⅢ).
AZM で初期治療を行い(BⅡ),AZM にて症状が改善しない症例に対しては,STFX を使用することを推奨する(BⅣ).
自費診療にて M.genitalium が検出されている症例では,STFX を初期治療として使用することは許容できる.
STFX は 1 回 100mg 1 日 2 回の用量を使用すべきであり,低用量では有効性が低い可能性がある.
治療中,コンドームを使用しない性行為は禁じ,パートナーの検査も行い治療を同時に行う(AⅠ).
※5 StatPearls(米国国立医学図書館 NCBI Bookshelf)「Mycoplasma Infections」(2023年8月7日更新)
With over 100 different species, the genus Mycoplasma is a unique bacterium that lacks a cell wall and causes a wide range of symptoms and infections.
Mycoplasma pneumoniae commonly causes "atypical pneumonia" a name derived because of its lack of response to antibiotics.
M. pneumoniae infection is most distinguishable for its gradual onset of symptoms and incubation period ranging from 2 to 3 weeks.
Mycoplasma genitalium, another Mycoplasma species is raising increasing concern as a cause of sexually transmitted infections.
Ureaplasma species, Mycoplasma genitalium, and M. hominis are genitourinary mucosal organisms and infection is spread through direct sexual contact.
M. hominis correlates with mid-trimester abortions and early miscarriages.
※6 CDC(米国疾病予防管理センター)「Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021: Mycoplasma genitalium」(2021年7月22日レビュー)
Among women, M. genitalium has been associated with cervicitis, PID, preterm delivery, spontaneous abortion, and infertility, with an approximately twofold increase in the risk for these outcomes among women infected with M. genitalium (766).
M. genitalium can be detected among 10%–30% of women with clinical cervicitis (767,770,772,914–916).
Data from case-control serologic studies (929–931) and a meta-analysis of clinical studies (766) indicate a potential role in causing infertility.
Similarly, evidence for a role for M. genitalium infection during pregnancy as a cause of perinatal complications, including preterm delivery, spontaneous abortion, or low birthweight, are conflicting because evidence is insufficient to attribute cause (766,932–934).
M. genitalium should be suspected in cases of persistent or recurrent urethritis or cervicitis and considered for PID.
Women with recurrent cervicitis should be tested for M. genitalium, and testing should be considered among women with PID.
NAAT for M. genitalium is FDA cleared for use with urine and urethral, penile meatal, endocervical, and vaginal swab samples
M. genitalium lacks a cell wall, and thus antibiotics targeting cell-wall biosynthesis (e.g., ß-lactams including penicillins and cephalosporins) are ineffective against this organism.
飯田橋・神楽坂での検査と治療
当院は「飯田橋駅」B3出口より徒歩3分、「牛込神楽坂駅」A3出口より徒歩5分、「神楽坂駅」1b出口より徒歩7分の場所にあります。マイコプラズマ感染症を含む性感染症の検査と治療は性感染症外来で行っています。
マイコプラズマ感染症の検査料金
性感染症検査(STD検査)の料金表のうち、マイコプラズマ感染症に関わる検査の料金です。
| 項目 | 料金 |
|---|---|
| ウレアプラズマ・マイコプラズマ検査 | 7,700円 |
診察を担当する医師は婦人科の女性医師です。
